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FIVとは?
感染から病気の発生まで

感染ルート
 感染猫の血中には感染力を持ったウイルスが存在し、ウイルスが唾液中に排泄されます。猫同士の喧嘩による咬み傷で感染しやすいといわれています。感染猫との同居、グルーミング、トイレの共有などでは、可能性はゼロではないものの、感染しにくいようです。猫は室内では咬み合うような喧嘩をしないこととも多少関係するようです。
感染の経路は、したがって傷口が主体であると思われます。皮膚で免疫を司るランゲルハンス細胞という食細胞に感染して、それが血液やリンパに乗って遠くに運ばれて行き、脾、リンパ節などを中心に、リンパ系の細胞に感染します。
母子間の垂直感染や、生後の感染も知られていますが、それほど多いものではなく、むしろ母乳から抗体をもらって、それが診断検査でFIV陽性と誤って判定されるケースも多いようです。
感染するとFIVに対する抗体が検出されるようになります。他の多くの感染症の場合、病気から回復する際に抗体が上がるので、抗体があるということは、昔に感染したということを示すものと通常は理解されていますが、FIV感染症の場合の解釈は異なります。すなわち、FIVに感染した猫というものは、治ることは一生ありません。そしてウイルスと抗体を一生保有し続けるのです。
このため、抗体が見つかればほぼ100%ウイルスがいると判定してよいのです(例外は母乳から抗体をもらった子猫の場合と、アメリカで市販されているワクチンを接種された猫)。通常は、感染から8週までに抗体が陽性となります。

猫はどのくらいFIVに感染しているか
 FIV感染は1986年に米国で最初に報告された後、世界中の家猫で見られることがわかっています。しかし、この感染症は1986年になって急に発生したものではなく、猫科動物が犬、猫の共通の祖先から別れた直後から、すなわち太古の昔から存在していたものと思われます。健康な猫で家の外に出て行くものを対象にFIVの感染率を抗体検査で調べてみると、野外での猫の密度に比例し、猫の「人口」密度の高い地域では非常に高いことがわかります。世界中で最も感染率が高いのは、日本およびイタリアで12%にも及びます。FeLV感染症と比べ、陽性率がこれほど高率である理由は、ウイルスが咬傷などで容易に感染すること、ひとたび感染すると、猫は長期間死亡することなく生き続け、また感染も消失しないことと関係するのでしょう。それにしても、元気に外を飛び回っている猫の10頭中1頭以上が感染しているというのは、非常に高い感染率です。感染猫で外猫と内猫の比をみると、日本では19:1と圧倒的に外猫に感染が多く、また雄猫の感染は雌の2倍以上あることから、感染が屋外で猫の喧嘩を通じて起こっている可能性が最も高いものと言えます。

感染と病気

  • 急性期
    感染後2目週以降に、猫には軽い症状がみられるよううになります。この期間を急性期と呼び、通常は1-2ヵ月間持続しますが、長いものでは1年程度軽い症状がだらだらと持続するものもあります。発症にあわせて抗体が陽性になりますが、はっきりとした陽性になるまで8週間ほどかかる猫もいます。症状は、発熱、リンパ節の腫れ、下痢などであまりはっきりしないこともあります。血液検査では白血球数の上下がみられることもあります。非常に若い動物が感染すると、激しい細菌感染などでこの時期に死亡することもありますが、若い猫の感染自体まれであるため、激しい発症をみることはきわめて少ないと思われます。成猫の場合は急性期は自然に終息し、無症状となります。

  • 無症状キャリアー
    この時期は、正しくは無症候性キャリアーと呼びますが、急性期の変化が見られた後に臨床症状が消失する時期をさします。抗体は引き続き陽性で、血液からウイルスも分離できます。この期間の持続期間は平均で2-4年位と思われますが、一部の猫では老齢で別の病気で死ぬまで、ずっとFIV感染に関しては無症状期ということもあります。無症状期の猫を個別によい環境で飼育して観察すると、2年間で36%ほどが発症することがわかっています。したがって4-5年経過しても発症しない猫はいます。

  • 持続性全身性リンパ節腫大(PGL)
    無症状期から発症期に向かう過程で、全身のリンパ節が腫れてくる時期があります。ただしその持続期間は2-4カ月と短く、すぐに明らかな発症期に入るため、この時期が見逃されることが多いようです。

  • AIDS関連症候群(ARC)
    PGL期に引き続きみられる真の発症期です。この時期の病気を示す猫の平均年齢は約5歳であり、FeLV感染の発症より遅れてみられるのが、この感染症の特徴です。複数のリンパ節の腫れに加え、抗生物質に反応しない発熱、体重減少、慢性口内炎(図9)、慢性上部気道疾患、慢性化膿性皮膚疾患など、様々な慢性疾患がみられます。血液の検査では軽度から中等度の貧血と、高γグロブリン血症がよくみられます。
     免疫学的な異常はすでに明らかで、リンパ球の総数はとくに変わらなくとも、特殊な検査でヘルパーT細胞の数を数えるとその減少がはっきりりとわかり、ヘルパーT細胞とサプレッサー/エフェクターT細胞の比であるCD4/CD8比は下がります。この時期が持続するのは通常は1年程度であり、その後、多くの猫は後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症します。もちろん、はっきりしないARC期の症状のままで、長期間生存するものもあります。

  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)
    ARC期から、さらに病気が進行してそのまま移行します。この病期の特徴は、激しい体重減少(図10)に加え、細胞性免疫不全を思わせる日和見感染または腫瘍がみられることです。日和見感染とは、一部の細菌や真菌の感染症で、免疫が正常の個体では何も起こさないが、免疫不全の個体で激しい病気を起こすものです。血液の検査では、貧血または白血球などの血球減少症もきられ、リンパ球数も激しく減少しています。CD4陽性のヘルパーT細胞は大幅に減少しています(<200/μl)。あわせて、CD8陽性のサプレッサー/エフェクターT細胞も減少し、免疫が機能できない状態になります。

  • FIV感染猫にみられる疾患
    FIV感染猫にみられる疾患(表3)で特徴的なものは、発症例の約半数で認められる、口腔内、とくに歯肉、歯周組織などの激しい炎症や細菌感染(口内炎)です。その他、慢性的に鼻づまりや鼻汁が激しいもの(慢性上部気道疾患)、皮膚や外耳道の慢性細菌感染、慢性腸炎、膀胱炎、尿路感染症などもみられます。寄生虫病としては、デモデックス症(毛包虫症)、疥癬症などや、回虫の濃厚寄生もみられます。日和見感染症としては、口腔内の常在菌による口腔内感染あるいは肺炎や膿胸、クリプトコッカス症(図11)、ノカルジア症などがあります。トキソプラズマ症は、非感染猫に比較して特に多いわけではないといわれています。しかし、非感染猫に比べ、猫伝染性腹膜炎(FIP)が起こりやすいといわれています。腫瘍性疾患としては、消化器型リンパ腫(図12)をはじめ、多くの悪性腫瘍が認められています。これらの病気はFeLVに感染した猫にみられるものと似ているため、猫にこのような症状がみられたら、病院で詳しい検査が必要になります(表4)。

表3. FIV感染猫の疾患

慢性口内炎
慢性上部気道疾患
細菌性肺炎
膿胸
慢性皮膚感染症
尿路感染症
慢性腸炎
消化器型リンパ腫
各種悪性腫瘍
外部寄生虫感染
内部寄生虫感染
神経疾患
免疫介在性血球減少症

表4. こんな症状がみられたらウイルス検査を(FeLVの場合とほぼ共通)

激しい痩せ
貧血(耳や鼻が白い)
呼吸が苦しい
長く続く下痢
治らない皮膚病
発熱(元気がない、耳が熱い)
リンパ節の腫れ(のどの下の腫れ物)
口内炎
慢性鼻炎
図9 ARC期の猫にみられた慢性口内炎
図9 ARC期の猫にみられた慢性口内炎
図10 激しく痩せたAIDS期の猫
図10 激しく痩せたAIDS期の猫
図11 AIDS期の猫の皮膚にみられたクリプトコッカス症
図11 AIDS期の猫の皮膚にみられたクリプトコッカス症
図12 AIDS期の猫にみられた消化器型リンパ腫
図12 AIDS期の猫にみられた消化器型リンパ腫
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