はじめに
猫白血病ウイルスは猫にとってたしかに恐ろしい病原体です。感染が長く続くと、ウイルスが体から消えることがなく、様々な病気を起こしやすくなります。感染しているかどうかは、病院内での簡単な検査でわかります。しかし、感染しているからといって、イコール白血病ではありません。たまたま、ウイルスの分類上、ネズミの類などでみられる白血病ウイルスと同じ仲間なので、白血病ウイルスと呼ばれていますが、感染していることと白血病は全く別物です。感染しても治ってしまう猫もいれば、白血病とは全く別の病気を起こす猫もいます。このウイルスに対する正しい知識を身につけ、正しい対処法を理解して下さい。
病原ウイルス
レトロウイルス科、ガンマレトロウイルス属、ほ乳類ウイルス群の猫白血病ウイルス(Feline leukemia virus: FeLV)が病原体です(図1)。
FeLVはどんなウイルス?
猫にしか感染しない猫固有のウイルスです。遺伝子の解析によれば、マウスの白血病ウイルスと共通の遺伝子を持っているため、現在の猫の祖先がネズミから感染して、その後猫という種の中で、独自のウイルスになったものと考えられます。FeLVは猫の体外では非常に不安定で、室温では数分から数時間で感染力を失ってしまいます。ただし排泄物などで湿った敷物などでは、やや長く感染力を保つこともあります。太陽光線、紫外線照射、熱などで簡単に死んでしまい、次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリンをはじめ、アルコール、洗剤、第4級アンモニウム塩などで殺すことができます。 |